歌舞伎初心者にもおすすめ、新作歌舞伎の演目3作

ワンピース歌舞伎などに代表されるように、現代に新しく作られた歌舞伎を新作歌舞伎といいます。
現代的な感覚で作られているので、歌舞伎初心者の方でも観やすいのが特徴です。

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近年、関西で観られた新作歌舞伎のなかから、特に「歌舞伎に興味がある友人にも勧めたいなあ」と印象に残った作品たちをご紹介します!

目次

1.『あらしのよるに』

2015年9月に京都南座で興行されました。中村獅童さん(狼のガブ役)、尾上松也さん(羊のメイ役)が主演。
アニメ映画化もされた大ヒット絵本が原作で、中村獅童さんはアニメ映画でもガブ役を演じていらっしゃいます。

わたしは原作の絵本にあまり馴染みがなかったこともあり、当初は観劇する意欲があまりありませんでした…。(すみません)
初日を迎えてからTwitterを見ていると、とても熱のこもった感想を目にして触発され、チケットを購入し観劇。
なぜ観に行くのをためらっていたんだろうと後悔するくらい、良かったです!

2015-09-23 10.44.26

狼や羊など… 登場人物の動物たちが魅力的

歌舞伎では、役者さんが狐などの動物を演じることもあり、作品も多くあります。『あらしのよるに』でも、巧みに動物が演じられていました。

狼は荒々しく、羊は可愛らしく、リスは細々と動き… 特に羊の跳ねまわる動きがとても可愛かったです(*^^*)
実は狼による羊の捕食シーンもちょっとだけあるのですが、惨さを感じずにファンタジーとして観られるのは、歌舞伎だからこそかもしれません。ちなみに、客席にはお子様の姿も多く見受けられました。

個人的にもっとも印象に残ったシーンをあげるなら、ガブとメイがお互いの正体を知る場面です。羊であるメイを食べたいけど、メイと仲良くなりたいから我慢するガブ、怯えて逃げ回るメイの動きが可笑しくて、笑いが止まりませんでしたw
その場面では1階席のお客さんを巻き込んだ演出もあり、客席が盛り上がっていました♪ 

歌舞伎が初めての人も、歌舞伎ファンも楽しめる作品

歌舞伎版『あらしのよるに』では、終盤は狼のボス・ギロとの対決へとストーリーが流れていきます。原作を読んでいないためはっきりと比較できないのですが、『勧善懲悪』の歌舞伎らしい筋書きに仕上がっていました。

歌舞伎の時代物に見られるような物語する(登場人物が自分の心情を打ち明ける)シーンもあり、ガブが六方(※)を踏みながら花道を駆け抜けたりと、歌舞伎で目にする場面がいくつも出てきます。
※六方…歌舞伎に見られる演出で、大きく手を振り、足を力強く踏みしめながら退場する振りのこと。『勧進帳』の武蔵坊弁慶の飛び六方などが有名です。

歌舞伎事典:六方|文化デジタルライブラリー

歌舞伎に馴染みのないかたにもとっつきやすい内容だけれど、随所に歌舞伎らしい演出があって、おこがましい感想ですが歌舞伎の作品として成立していると感じました。長年の歌舞伎ファンのかたも、十分に楽しめると思います。
『あらしのよるに』をきっかけに、たくさんのかたに歌舞伎を観てほしいという出演者や裏方さんの意欲を感じたように思いました。
とても面白かったので、ぜひ再演してほしい一作です!

2.『阿弖流為(アテルイ)』

劇団☆新感線の同名作品を歌舞伎化したもので、歌舞伎NEXTと銘打たれています。市川染五郎さん(阿弖流為役)、中村勘九郎さん(坂上田村麻呂役)、中村七之助さん(立烏帽子役)が共演された作品。
関西では、2015年10月に大阪松竹座で興行されました。梅田に大きなポスターが貼られていたので、目にした方も多いと思います。
2015-08-30 12.40.59

立て続けに続くアクションシーンが見もの。出演者の熱量を感じる舞台

アクションシーンが多い作品ですが、歌舞伎役者は身体能力が高い方ばかり。そんな役者さんたちが立ち回りを演じられており、メイクや衣装の雰囲気も相まってとにかく格好良い!!絶えず舞台上を動き回り、全力で演じられているので、役者さんたちのエネルギーを強く感じました。
特に中村勘九郎さんが演じる坂上田村麻呂は少年漫画の主人公が具現化したかのようなキャラクターで、熱かったです…!!

歌舞伎役者が出演すると、どのような作品でも歌舞伎になる

お話そのものは、新感線の舞台がベースになっていることもあって、歌舞伎ではない舞台にもなりそうです。ただ、出演者が歌舞伎役者でかためられているので、台詞回しや所作などところどころに歌舞伎の臭いを感じます。歌舞伎役者が演じると、歌舞伎らしくなるのだなあ…と実感。歌舞伎の伝統の一端を感じた気持ちになりました。

ちなみに、阿弖流為は2016年6月から松竹系の映画館でシネマ歌舞伎として上演されます。
気になる方はぜひご覧ください!

3.『コクーン歌舞伎 三人吉三』

『三人吉三』のお話自体は古典歌舞伎(古くからある歌舞伎)で、さらにわたしが観たのはシネマ歌舞伎の『三人吉三』なのですが… 演出が現代的で斬新だったので、あわせてご紹介します。

『三人吉三』の正式名称は『三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)』で、江戸時代に河竹黙阿弥が脚本を書いた作品。『コクーン歌舞伎三人吉三』は『三人吉三廓初買』をもとに、演出家の串田和美さんが監督をつとめて現代的に蘇った作品です。

ちなみに、黙阿弥は歌舞伎狂言の脚本家。『弁天小僧』など今も多くの作品が楽しまれており、七五調の台詞などに特徴があります。
くわしくは下記のページが詳しいです。

黙阿弥|文化デジタルライブラリー

出演は中村勘九郎さん(和尚吉三)、中村七之助さん(お嬢吉三)、尾上松也さん(お坊吉三)。三人の『吉三』という名を持つ盗賊たちが、金や自らの血を巡って巻き込まれる運命を描いています。

東京で興行された当時、Twitterでの評判がたいへん良くて気になっていました。現在では前述の通り、シネマ歌舞伎で観ることができます。

古典歌舞伎をスタイリッシュに楽しめる

もともとが古典歌舞伎の名作ですので、今回挙げた3本のうちでは、もっとも歌舞伎らしい筋書きの作品です。台詞は現代的に話しているところもあれば、黙阿弥の七五調を存分に聞かせるところもあり…といった具合で聞き取りやすいので、初めて古典歌舞伎を観てみたいと思ったかたにお勧めです。
舞台に本物の水を使ったり、ラストシーンの立ち回りでは大量の紙吹雪が舞ったりと、息もつかせぬ演出が見ものでした。

シネマ歌舞伎になるにあたって、串田和美さんの手によって編集がおこなわれ、新たな演出も追加されたそう。冒頭は当時の市井の人々を映す場面から始まり、映画作品のように引き込まれます。

個人的にシネマ歌舞伎の良い点を挙げるなら、やはり役者の表情がつぶさにわかることかな、と。とくに終盤以降の和尚吉三の迫真の演技を大画面で観られるのはよかったです。実は映画館で嗚咽するくらい、勘九郎さんの演技に引き込まれました。

まとめ

個人的な話になりますが、歌舞伎を初めて観るという友人と歌舞伎に行くとき、どの演目を選ぼうか?いつも悩んでしまいます。とくに関西は歌舞伎を上演している月が限られているので、余計に悩みます(^^;)
そんなときに新作歌舞伎が興行されていたら、歌舞伎が初めての人でも入りやすいな、と思いました。

これからも、気鋭の歌舞伎役者によって生み出されていくであろう新作歌舞伎。どのような作品が生まれるのか、楽しみです。

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