2024年南座『坂東玉三郎特別公演』を観ました

2024年6月、南座で『坂東玉三郎特別公演』を観ました。

坂東玉三郎特別公演|南座|歌舞伎美人

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目次

女方の大役と言われる阿古屋

わたしが歌舞伎を好きになったときから気になっていた、『壇浦兜軍記 阿古屋』(以下『阿古屋』)。
あらすじはざっくりとこんな感じ。

平家滅亡後、源頼朝の命令により残党狩りが行われるなか、平家の武将悪七兵衛景清の行方を問い質すため、景清の愛人である遊君阿古屋が問注所に引き出されます。

景清の所在を知らないという阿古屋に対し、代官の岩永左衛門は拷問にかけようとしますが、詮議の指揮を執る秩父庄司重忠は、阿古屋に琴、三味線、胡弓を弾かせることで彼女の心の内を推し量ろうとします。

https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kyoto/play/870

物語の流れで、遊女の阿古屋が琴・三味線・胡弓を演奏します。
役者が実際に楽器を使って演奏するうえに、恋人を想って揺れる女心も表現せねばならないので、阿古屋は『女方の大役』と言われているのだとか。

「一度『阿古屋』を観てみたいな〜」と常々思っていましたが、現代でこの役を演じられるのは坂東玉三郎丈だけだそう で、上演機会が少ないのです。

※若手の歌舞伎役者に、玉三郎丈が阿古屋のお役を教えられたことはあります。

そのため「南座で玉三郎丈主演の『阿古屋』が上演される」と知った時は、この機会を逃すまい!とチケットを取りました。

玉三郎丈の観客への愛情を感じる『口上』

玉三郎丈(以下、玉さまとお呼びします)は、過去に何度か大阪松竹座などで『坂東玉三郎特別公演』を観劇しました。
特別公演では玉さまが客席に向けてご挨拶される『口上』があることが多く、今回の公演でも、その時間がありました。

『口上』では、過去に玉さまが『阿古屋』を演じた時のこぼれ話や、今回の舞台に対する思いなどを聞くことができました。

玉さまの公演で『口上』を聞く度に、玉さまの観客への思いやりや愛歌舞伎への愛歌舞伎に関わる方々への愛を感じて、とてもありがたい気持ちになります。

管理人ぬま

一流の方ってお人柄も素晴らしいのだなあ、と感じ入ったり。

片岡千次郎丈の『阿古屋』解説

『口上』のあとは、『阿古屋』の物語の解説へ。
解説されるのは片岡我當丈のお弟子さんの片岡千次郎丈。関西で歌舞伎を観ていると、芝居の中で大切な役を務めておられることが多く、お顔を拝見することが多い方です。

千次郎さんの解説は声がとっても聞こえやすく、わかりやすい!
はきはきとした語り口の解説のおかげで、『阿古屋』の世界にすんなりと入って行けました。

玉三郎丈の凄さを実感した『阿古屋』

さて、肝心の『阿古屋』の上演です。

花魁姿の玉さまは本当にお美しい…!

うっとりと観ていたら、あっという間に芝居の山場である琴、三味線、胡弓を演奏する場面へ。
まずは琴から。

管理人ぬま

予想していた以上にたっぷり演奏するね?!

と驚くくらい、長い時間演奏されていました。琴は義太夫とのセッション(?)もあります。

三味線や胡弓も、演奏されている間は阿古屋リサイタル in 南座という感じで、まるで別世界のよう。聞き入ってしまいました。
わたしは音楽に関しては素人ですが、特に玉さまのお琴を演奏する技術は相当なものなのでは…と思いました。これは女方の大役だよなあ…と納得。

遊女の悲壮な覚悟も感じられるけど、変わらずお美しい玉さま。玉さまの『阿古屋』を観られて、本当によかったです。
阿古屋を審判する重忠役の中村吉之丞丈も、器の大きい人物ということが伝わってきてかっこよかった!

岩永の人形振りという、もう一つの目玉もある

『阿古屋』では、岩永左衛門という(ざっくり言うと)完全な悪役が登場します。劇中では、彼のみ人形振りという人形の動きをまねた演技をします。

人形振り | 歌舞伎の演出と音楽 | ユネスコ無形文化遺産 歌舞伎への誘い

なぜこの演目で岩永だけ人形振りなんだろう?と考えていたのですが、悪役である岩永が誇張された動きをするおかげで、醜悪な彼の人間らしさが薄れて、阿古屋や重忠という(物語の中では)善の存在が引き立つのかな…と思ったり。

人形振りを観るたびに本当に人形に見えるので、歌舞伎役者ってすごいなあと感心します。

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