2024年6月上旬、大阪松竹座で『スーパー歌舞伎ヤマトタケル』を観ました。
『ヤマトタケル』初観劇
わたしはスーパー歌舞伎を『スーパー歌舞伎Ⅱ(セカンド)』のシリーズから観るようになりました。
『新作歌舞伎ワンピース』は大好きな作品で、『新版オグリ』はコロナ禍で観劇は叶いませんでしたが、配信やCS放送で楽しんでいます。
『スーパー歌舞伎』=面白い舞台と認識していて、『ヤマトタケル』も気になりつつも観たことがなく。
ほぼ知識のない状態で観劇しました。

スーパー歌舞伎の古典的名作だった

スーパー歌舞伎の一番最初のお話だから、もしかして演出に古さとか感じるのかな?
…と、観劇前は思ったりしました。そんな自分を張り倒したいです。
大碓命と小碓命のスピーディーな早変わりの場面で、「ワンピース歌舞伎でも見た演出だ!」と気づいたり、炎の中の立ち回りにも『スーパー歌舞伎Ⅱ』に連なるものを感じたり。
まさにスーパー歌舞伎の古典的作品!
これを40年前に作り出した市川猿翁丈の天才ぶりを改めて感じました。
ヤマトタケル役の市川團子さんに目が釘付け
主役の小碓命(ヤマトタケル)を演じるのは、市川團子さん。
初登場の瞬間からわたしの目は釘付けに👀
晴れ晴れとした表情とお衣裳の華やかさもあり、キラキラと輝いているように見えて。不思議な吸引力がある方で、目が離せませんでした。
役の年齢と実年齢が近い方が演じるからこそ、伝わってくる良さ
役者の実年齢によって、役から受ける印象って変わるものと思います。歌舞伎では役者の実年齢から離れた役をすることが往々にしてあるので、特に。
観劇時、團子さんは20歳。
これから何にでも染まれるという真っ白さが、一幕目のヤマトタケルの人物像と合っていて、とても貴重なものを見ている気分になりました。
ヤマトタケルの役の年齢に近い團子さんが演じるからこそ、より強く感じられるヤマトタケルの青さとか純粋さとか真っ直ぐさがとてもよくて…鮮烈に印象に残りました。
実は、わたしは團子さんのことをメディアやネット記事等で拝見していましたが、実際の演技を観る機会は少なくて。(2023年に南座で上演された『新・水滸伝』だけかも?)
『ヤマトタケル』で主役をされると知ったときは、どんな感じになるのか想像がつきませんでしたが、今の團子さんで『ヤマトタケル』を観られて本当によかったです。


終盤のヤマトタケルも印象的
ネタバレになっちゃうのですが。
ラストの墓のシーンで、墓にワイヤー?が仕掛けられてるのが目視できたので



墓がボカーン!てなって、ヤマトタケルが出てくるのかな…
と考えながら観ていたら、本当にそうだったのでちょっと笑っちゃいました。
でも出てきたヤマトタケルは、動きからして完全にあの世の住人。
宙乗りの前でもヤマトタケルがとても爽やかで、「死んでこんなにスッキリとした気持ちになれるなら、死ぬのも怖くないかも…」と思えるほどでした。
新作歌舞伎『ファイナルファンタジーX』でも終盤、死後の世界が爽やかで、怖くないものとして描かれているように感じたのですが、その時のことを思い出しました。
隼人さんのヤマトタケルも観たかった!
そして團子さんのヤマトタケルがとてもよいと同時に、隼人さんのヤマトタケルもまた違って、よかっただろうなー!と思います。
特に大碓命は大人の色気が強くなりそうな気がする。
若手の奮闘と、ベテラン勢の手堅さが印象に残る公演
團子さんのことばかり書いてしまいましたが(それだけ印象に残ったので)、もちろん團子さん以外の役者さんも、とてもよかったです。
團子さんと中村福之助さん・歌之助さんの成駒屋兄弟ら若手が物語を駆け抜け、
近くで壱太郎さんが見守り、
それらをガッチリと支える澤瀉屋の盤石なベテラン勢…
という配役がとてもよかったです。
つい若手にばかり目がいってしまうのですが、澤瀉屋さんのいつもの面々が手堅く芝居をされているからこそ、澤瀉屋のお芝居たり得ているのだろうと思います。
Xに投稿した『スーパー歌舞伎ヤマトタケル』感想イラスト
ヤマトタケルざっくり感想絵。とにかくキラキラした小碓命に初っ端からやられました。今の團子さんでヤマトタケルを観られてよかった。弟橘姫は入水の健気さに泣き、タケヒコとヘタルベの懸命さもよく、若手俳優の活躍が頼もしく感じられた公演でした☺️#大阪松竹座 #スーパー歌舞伎 #ヤマトタケル pic.twitter.com/oADjS6LHFC
— ぬま (@numa_kabuki) June 14, 2024
『スーパー歌舞伎ヤマトタケル』は英雄譚かつ侵略者の話
余談ですが、わたしが観劇した頃、とあるミュージシャンのMVがSNSで話題になりました。
侵略者を模したMVだったこともあり、その話題を見てわたしはつい観たばかりのヤマトタケルを思い出しました。
ヤマトタケルは蝦夷や熊襲を制圧した英雄ですが、蝦夷や熊襲から見れば侵略者です。
ヤイラムとヤイレポを倒したあとに火をつける場面は、観ていて「うわぁ…(そこまでやるか…)」という気持ちを抱きました。
一幕最後で笑うヤマトタケルに不気味さを感じたし、三幕終盤でヤマトタケルが「熊襲も蝦夷も仲間内で閉じていたけどそれではだめだ、世界に開かなければ」みたいなこと言ってるのを聞いて「いやいやそう思うなら武力で制圧せずに対話しようぜ…」とも思いました。
そう思うのは現代だからなのか? 三代目猿之助丈が『ヤマトタケル』を初演された時に観たら、こんなことは感じなかったんだろうか…と、ふと疑問に思いました。
まとめ
いろいろぶつぶつ書いてますが、市川團子さんの『ヤマトタケル』はすんごい面白かったです!



2024年10月の博多座、遠征して通いたいー!!
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