2024年7月上旬、大阪松竹座で「関西・歌舞伎を愛する会 結成四十五周年記念 七月大歌舞伎」の夜の部を観ました。
義経千本桜 木の実・小金吾討死・すし屋
義経千本桜のすし屋。
有名なお話ですが、わたしは初見。あらすじを詳しく知らない状態で観ました。
忠義のために家族を差し出す男の話
歌舞伎の時代物に出てくる、「お使えする人のために家族を犠牲にする主人公」。
わたしはこれがどうも苦手で…
実は差し出される子と同じくらいの年齢の息子がいることもあり、『すし屋』で主人公の権太のやることは全く理解できません。
権太が家族を差し出そうとしているとわかった瞬間、気持ちの上ではかなり引いてしまいましたが。権太の片岡仁左衛門丈のお芝居に、まんまと泣かさました。
『すし屋』の前の場からやるから、理解が深まる
仁左衛門さんのこだわりとして、『すし屋』を上演する時は、前の場の『木の実』『小金吾討死』もあわせてされるそうです。
権太の家庭、(息子の善太郎との)親子の愛情をまずはアピールしておく、これは私の大前提でございます
https://www.kabuki-bito.jp/news/8918
上演時間が2時間半近くなることもあり、「途中で眠くなるかも…」という心配が頭を過ぎりましたが(すみません…)、段階を踏んでお話を進めてくれるお陰か、役者の芝居の力か?
全然眠くなる暇がありませんでした。

むしろ『木の実』『小金吾討死』なしで『すし屋』を観てたら「権太なんやねんこいつ💢」って思ってたかも知れない。
※口が悪くてすみません。
なにはさておき。
現代に住む自分にとっては、権太のやることに理解も共感もできないけど、仁左衛門さんの芝居に泣き、権太父弥左衛門の歌六さんの芝居にも泣き。
「役者の芝居の力で物語の世界に入っていけてしまうところが、歌舞伎の面白いところだな」と感じた一幕でした。


汐汲
ある男(在原行平)を慕う海女と、海女に思いを寄せる男という、二人からなる舞踊。
海女の扇雀さんがとってもおきれいだなあ…🥰とうっとり見ていたら萬太郎さんが出てきて、いつの間にか立ち回りのような動きになり、男の飛び六方で幕切れ。
という流れで、最初と最後の落差がちょっと可笑しかったです。萬太郎さんはいい声で軽快に動きますねえ。
鈴のついた三連傘カワイイのでわたしもほしい。
八重桐廓噺
新・時蔵さんの襲名披露狂言。
実はこの演目を一番のお目当てに、夜の部を観に来ました。
時蔵さんは2023年の『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』でルールーを演じられている(当時中村梅枝)のを拝見し、大好きになってしまいまして。
FFXのルールーの強さ、優しさ、悲しさ、そして色気を見事に体現されていて、本当に素敵でした。


八重桐の新時蔵さん、すっごく良かったーーー!
廓の噺をする場面では、元傾城らしく品があってしっとり色っぽく。
終盤の立ち回りでは、誰よりも男前でかっこいい。
時蔵さんの雰囲気(ニンと言うのでしょうか)に合っていてかなりハマり役なのではないでしょうか。美しかったです。
しかし『八重桐廓噺』は何度観ても勝手に自害し、勝手に魂を八重桐に乗り移らせる夫・時行が酷いやつだなと思っちゃう。
萬太郎さんすごくない?
『八重桐廓噺』には、腰元お歌として時蔵さんの弟さん・萬太郎さんも出てこられます。女方もかいらしかった。
というか萬太郎さん、前の『汐汲』から顔を変えて衣裳を変えて出てくるの、かなり大変だったのでは…??
20分前とは全然違う風貌で出てくるので、びっくりしました。
それにしても見ごたえがあって、満足度の高い公演でした!


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