2014年 四国こんぴら大芝居を観劇しました

久しぶりの更新になってしまいました。
今回は毎年恒例、こんぴら歌舞伎のレポートです。

今年は市川染五郎さんが一座を率いており、尾上松也さんや中村壱太郎さんなど、若手の俳優さんがたくさん集まっています。
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目次

今年のこんぴら歌舞伎は昼・夜ともに通し狂言

通し狂言というのは、ひとつの演目を始まりから最後まで演じる形式のこと。
実は歌舞伎はひとつの演目を全て演じきるということが少なく、ある物語の一幕(一部分)だけ上演される場合がほとんど。
たとえば三幕ある公演を観に行った場合、それらのお話は全てばらばら…ということがよくあります。ダイジェスト版のように色々と観れることが面白く、お得感もありますが、「このお話の前後はどうなってるんだろう?」と思うこともしばしば。
通し狂言で最初から最後までを見ると、お話がよく分かります。

昼公演は、『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)』という人形浄瑠璃でも有名なお話。
夜公演は近松門左衛門作の『女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)』です。こちらも人形浄瑠璃が有名で、映画化もされているそう。
両方とも未見のため、どちらを観るか悩んだのですが、今回は夜公演を選びました。
『女殺油地獄』は、2013年に片岡愛之助さんが松竹座で演じられていた『大坂純情伝』の中で、女殺油地獄の一部をモチーフにした幕がありました。その場面がとても印象的で…いつか原作を観てみたいと思っていたのでした。

いざ、金丸座へ

琴平町についたら早々に荷物を旅館に預け、金丸座へ向かいます。
今回はあいにくの雨でしたが、早くから大勢の人が開場を待って列を成していました。
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こちらが女殺油地獄の絵看板。一幕ずつ、幕の象徴的な場面が描かれています。
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開場して中に入ると、天井には役者紋(俳優さんの屋号にあわせて持っている紋)が描かれた提灯がずらり。わくわくする時間です。
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今年は平場の席で、なんと花道の真横!俳優さんの様子がよく見えました~!!
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ちなみに、金丸座の平場はマス席といって、通常は梁で四角く区切られています。この席のなかに5名ほどで座るのですが、いかんせん、昔の日本人よりも体が大きくなった現代人にはちょっと窮屈で…。
それが、今年はマス席を縦に区切る梁が取り払われていていました。ちょっとのことですが、これだけでも広々と感じますね!とてもありがたくて、楽ちんに観劇することができました。

『女殺油地獄』は放蕩者・与兵衛の転落の物語

女殺油地獄のあらすじを紹介すると。
主人公は油屋の次男、与兵衛。彼はろくに働かずに芸者遊びをし、昼間から遊び仲間と酒を飲み、飲み代のために借金をするような(ろくでもない)男。
近所の油屋の夫人、お吉は彼を心配しておせっかいを焼きますが、そんなことには聞く耳を持ちません。
彼の家族も、彼の扱いに悩んでいます。実は与兵衛の実父は幼い頃に他界していて、養父の徳兵衛はもともと油屋の番頭だった男。かつての立場もあってか与兵衛に厳しく出ることが出来ません。母のお沢は、義父の代わりのつもりもあってか、与兵衛に辛辣にあたります。
また、与兵衛には兄弟によく出来た兄の太兵衛と、病弱な妹のおかちがいます。
詳しいあらすじはWikipediaに譲るとして…

観劇したときの感想をTwitterにアップしていたので、一部だけ抜粋。

市川染五郎さんの演技がとてもよくて…
与兵衛はほんっとうにどうしようもない男だけど、じつは小心者で、家族の前で偉そうにしているのも、じつは意地を張っているだけなのでは?と感じました。
よく出来た兄と比較されることもあっただろうし、父が亡くなったあとで、与兵衛の身近にいた番頭と再婚した母に対して、思春期の繊細な時期なら、複雑な感情を持つこともあったと思います。
その気持ちを出せず、素直に甘えられなくて、違う形で感情を吐き出すようになったのかな…と染五郎さんの与兵衛を見ながら思いました。
ちなみに花道が真横だったので、俳優さんの顔がよく見えました~。そして壱太郎さんは本当に美しかった…。

数分間続く、凄惨な殺しのシーン

見どころはなんといっても、第二幕の殺しのシーン。
借金に悩んだ与兵衛がお吉(近所の油屋の夫人)にお金の工面を頼みますが、信用してもらえず逆上し、とうとうお吉を殺しお金を奪います。

殺しの舞台はお吉の主人が商う油屋。殺しの最中に油の入った入れ物が倒れ、油に足を取られて滑り…最後には油まみれになって、与兵衛はお吉を殺します。
このシーンは染五郎さんの気迫もさることながら、浄瑠璃と三味線の呼吸も絶妙で、とにかく不気味で怖かったです。

手に入れた金で借金を返し、悠々と遊び暮らしていた与兵衛ですが、第三幕でとうとう御用となります。


そうそう。第三幕が始まった直後、仮花道(金丸座の上手にある細めの花道)から与兵衛たちが登場し、客席のマス席の間をぬって通るというサービスがありました!
仮花道を使った演出があることを知っていたのですが、今まで居合わせたことがなかったので、すごく嬉しかったです~。しかもマス席を通るとき、真後ろの梁を歩いていらっしゃったので…眼福でした。
こういった距離感の近さは、金丸座ならではですね。

こんぴら大芝居の観劇は、金刀比羅宮のお詣りもあわせて

こんぴら歌舞伎を楽しんだ翌日は、金刀比羅宮のお詣りに。歌舞伎俳優のかたもお詣りにいくという奥社まで行ってきました。階段の数、およそ900段…!
体を鍛えている歌舞伎俳優のかたは、これくらいひょいひょいと行くのかな~…と息を切らしながら思っていました。(普段デスクワークばかりであまり歩かない生活をしているので、その後5日間ほど筋肉痛に悩まされました。w)
それでも、奥社までの空気は清浄で、自然豊かで。とても癒やされました。
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帰路は参道をぶらぶら歩きながら琴平駅へ。
参道にある灸まん本店で休憩するのが毎年の楽しみなのですが、その看板に澤村藤十郎さんや中村勘九郎さんなど、名だたる歌舞伎俳優の花札を見つけました。
きっといらっしゃったときに貼られたのでしょうね。
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金丸座での歌舞伎は舞台との距離感が近く、臨場感があってとても楽しいです。
興味をお持ちの方は、JTBなどで観劇プランも組まれていますので、ぜひ来年に観劇なさってみてはいかがでしょうか(*^_^*)

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