漫画『ぴんとこな』で読み解く歌舞伎

歌舞伎をテーマにした漫画で、気になっていた『ぴんとこな』。
読み始めて面白いなぁと思っていた頃にドラマ化が決定し、記事を書いている時点では放送目前です!人気作なので今更ながら…の感はありますが、読んで感じたことを書きます。

目次

歌舞伎と青春をていねいに描いた、読み応えのある漫画

主要人物は若手の歌舞伎俳優2人と、歌舞伎好きな女子高生。物語の進行とともに3人の関係がゆるやかに変わっていく様子が見ものです。

河村恭之助:歌舞伎の名門、木嶋屋の御曹司。
 歌舞伎に全くやる気を出さないが、一弥との出会いから次第に歌舞伎にのめり込んでいく。
澤山 一弥:一般の家庭出身の歌舞伎役者。
 努力のすえに頭角をあらわしつつある若手有望株で、強いハングリー精神の持ち主。
千葉あやめ:歌舞伎が大好きな女子高生。一弥と幼馴染。
 恭之助を叱咤激励(?)したことがきっかけで、彼に一方的に好かれることに。苦労人。

物語の前半では、あやめは初恋の相手だった一弥を一途に想っていて、あやめが好きな恭之助はそれが気に食わない。また、御曹司として恵まれた環境にいるのに、芸に身が入らない恭之助に対して、一弥は敵対心を燃やします。
恭之助と一弥が次第にお互いの実力を認めて、なくてはならないライバル関係を築いていくさま、あやめの気持ちのゆらぎなど…彼らを取り囲む梨園の大人たちも含めて人物が魅力的で、丁寧に描写されています。

2013-06-26-23.05.15-(1)
もちろん、実際の歌舞伎の演目も、さまざまに登場します。
細かな解説を通して演目を詳しく知ることができますし、まだ観劇したことがない演目(私の場合は三人吉三、女殺油地獄、野崎村など…)を観劇することがますます楽しみになりました。

名門の御曹司と、門閥外出身の役者の微妙な関係

個人的には、御曹司である恭之助と、一般の家庭出身で歌舞伎界に入った一弥の対比がとても面白いです。

実際に歌舞伎を観ていて強く感じるのは、歌舞伎は『家で引き継いでいく芸』なのだということ。
少し話がそれますが… 襲名披露公演の口上の幕では、襲名する役者さんとともに先輩の役者さん方も同席されます。
その際、襲名する役者さんにまつわるちょっとしたお話をされるのですが、聞いていると歌舞伎役者さん同士が親族であったり、血縁で結ばれていることがとても多いです。(勘九郎さんの襲名披露公演では、「あんなに小さかったのに…」という言葉や、「父親の○○のおじさまには若いころにお世話になり…」という、血縁者ならでは?の言葉を聞いた記憶があります)

歌舞伎のいちファンとして、そういった俳優のかたがたが歌舞伎を演じ続けてくださることを本当にありがたい、と思います。幼い頃から歌舞伎に触れて芸を磨き、大名跡を引き継いでいく御曹司がいるからこそ、歌舞伎の芸が現代にまで続いていることは確かです。
ただ、その反面、一般の家庭出身の方が名を成していくのは大変なことなのだろうなぁ、とも感じます。門閥外出身で人間国宝となられた名女形・坂東玉三郎さんや、立役としてご活躍の片岡愛之助さんのような存在は、非常に稀なのだそう。

そのため、一弥が恭之助を観て、彼が持つ(御曹司ならではの)華やかさに嫉妬するところや、歌舞伎界でのし上がるために葛藤するさまが妙に現実味を持って感じられて、目が離せません。
こういった題材を描ける嶋木あこ先生は本当に歌舞伎がお好きなのだな、と感じています。

ドラマでは歌舞伎役者の登場も

2013年7月から始まる『ぴんとこな』のドラマでは、歌舞伎の興行主である松竹株式会社が全面協力するとのこと。衣装や美術がおそらく実際のものを使われると思いますし、お芝居のシーンが期待出来そうです。本家歌舞伎役者も出演されるそうなので、そちらも楽しみです!
木曜ドラマ9『ぴんとこな』 | TBSテレビ

歌舞伎を描いた漫画、『ぴんとこな』。ドラマ化される機会にぜひ、読んでみてはいかがでしょうか?

追記(7月22日):『ぴんとこな』のドラマを見て歌舞伎に興味を持った方へ

ドラマでも描かれているとおり、歌舞伎の舞台は華やかでとても面白い世界です。ふだん生活していたらなかなか見られないような着物、お化粧、セリフ、舞台のセットなど…
ちょうど今、日本各地を巡業する松竹大歌舞伎がおこなわれています。もしもお近くの劇場などで公演がある場合は、ぜひ一度観に行ってみてください(*^_^*)
歌舞伎が地元にやってくる! 2013年 松竹大歌舞伎のすすめ
「どうやって歌舞伎を観たらいいのかわからない…」というかたは、次の記事に詳しく書いているので、ぜひ参考にしてみてくださいませ!
歌舞伎に興味はあるけど、観たことがないという人へ

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次